今年もまた出会いと別れの季節がやって来た。日本人元メジャー3投手が現役引退を表明。

コロナ禍の中で変則日程となった2020年のプロ野球。今日、10月26日の夕方に今年のドラフト会議が行われ、希望と可能性に満ちた新人選手達が選抜される。変ったところでは、NPBを経ずに行ったメジャーから今季独立リーグのルートインBCリーグ「埼玉ヒートベアーズ」に移籍した田澤純一が、物議を醸した、いわゆる「田澤ルール」撤廃を受けて今日のドラフト指名を待っている。

元メジャーのセ・リーグ3投手が今季で現役を引退

来る人が居れば、去る人も居るのが世の常。

今季限りで引退を表明した、奇しくも同世代のセ・リーグ所属の3投手が居る。阪神タイガース藤川球児(40歳)、東京ヤクルトスワローズ五十嵐亮太(41歳)、そして読売ジャイアンツ岩隈久志(39歳)だ。

3人とも、押しも押されぬ日本プロ野球界を代表する投手として海を渡りメジャーリーグへ挑戦した。中でも、岩隈久志は、シアトルマリナーズに所属して無安打無得点試合を達成するなど、先発投手としてエース級の働きを見せたのは特筆すべき事だろう。

成績藤川球児五十嵐亮太岩隈久志
NPB成績(10/26現在)17年779試合60勝38敗243S163H18年823試合65勝39敗70S163H13年226試合107勝69敗0S0H
MLB成績3年29試合1勝1敗2S1H3年83試合5勝2敗0S4H7年136試合63勝39敗2S0H
日米通算成績20年808試合61勝39敗245S164H20年906試合70勝41敗70S167H20年362試合170勝108敗2S0H
藤川球児、五十嵐亮太、岩隈久志 主要成績一覧

それぞれが、それぞれの持ち場で何れ劣らぬ成績を長年に渡り残してきたのが見て取れる。

速球派のリリーバーとして鳴らした藤川と五十嵐の二人は、残念ながらメジャーではその真価が発揮されたとは言い難い成績にはなったが、それでもその投球スタイルを引退年まで崩さずに貫き通したのは素晴らしい。

昨日、10月25日の中日戦、引退試合として本拠地神宮に登板した五十嵐は、相手打者が外国人ゆえの空気の読めなさからたった一球しか投じる事が出来なかったが、その渾身のストレートは143㎞を計測し、弱体ヤクルト投手陣において、まだまだ引退するのは惜しいと思わせたのはさすがだった。

また藤川も、今季はクローザーを任されて開幕を迎えたくらいに首脳陣の信頼は厚く、コンディション不良で二軍に落ちたものの、一軍に復帰後の10月20日からの広島との甲子園3連戦に登板し、最速147㎞を記録するなど最後の最後までその衰えぬ闘志を見せつけてくれている。残り試合でも登板する場面はあるだろうし、その時は代名詞のストレートを我々に見せつけてくれるだろう。

この様に、引退の花道を飾る登板を、自らの手で公式戦の最中に実現出来た(出来る)両投手に比べて、残念ながら岩隈久志にはそれを望むべくも無い。ひょっとしたら、今の状態はマウンド上から始球式の球を投じる事すら難しいかも知れないのだ。

岩隈は2020年日本シリーズ用の「隠し球」だった?

セパ両リーグともペナントレースの趨勢は喫した感がある。(パ・リーグは2位チームとのクライマックスシリーズが有るものの)

ぶっちぎりでの優勝を、見事な選手采配を駆使して見せた原巨人。対するは質、量とも他球団を圧倒するソフトバンクが日本シリーズの相手になると見て妥当だろう。

工藤ソフトバンクは2017年から日本シリーズを3連覇しており、そのシリーズの闘い方は手慣れたもの。若手を抜擢し続けたペナントとは違い今回のシリーズも、短期決戦に強いベテラン勢を用いてくる可能性が高いと見る。秘密兵器は、今季一軍での出場が無い内川か?

片や、原巨人。

前年の日本シリーズでは、工藤ソフトバンク相手に屈辱の4連敗。突破の為にエース菅野をクライマックスシリーズに優先投入せざるを得なかった影響で、日本シリーズでの登板は3敗で迎えた最終戦となったのは致し方無かったとして、その他の先発投手陣がシリーズ初戦を任された最多勝投手山口俊を含め機能せず、原巨人としては悔いの残るシリーズとなった。

クライマックスシリーズが無い今季は、エース菅野を日本シリーズ初戦に登板させる為に残りのペナントシリーズのローテーションを組みかえるなど、昨年よりはベターな条件で臨める見通しだ。

しかし、短期決戦ならではの「秘密兵器」と呼べる存在が居ない。原監督は、それを岩隈に期待していたのではないかと思う。根拠は、岩隈が「最後のマウンド」となった今月10月初旬に行われた東京ドームでのシート打撃登板である。

「たった一球」で右肩を脱臼

10月中の一軍での実戦登板を目指して二軍で調整を続けていた岩隈。10月中と言うことは、その視線は当然ソフトバンクを仮想敵とした日本シリーズだ。WBCを共に戦った仲間として、原監督は岩隈の経験に日本シリーズ優勝への「鍵」を託す決断をする為、その目で直接状態を確かめたかったのだろう。

そして、その原監督が見守る中、岩隈が打者に投じた初球が打者の肩付近を直撃し、投げた本人の岩隈は右肩を押さえてマウンド上にうずくまったのだと言う。何と、「その一球」で投球する方の右肩を脱臼し、同時に岩隈の投手生命に終わりを告げたのだ。

メジャー移籍後の田中将大は岩隈の投球スタイルを倣った?

NPBデビュー直後の岩隈は、独特の二段モーションを駆使しつつ、キレのあるフォーシームを中心とした投球スタイルだった。

2006年からの二段モーション禁止(現在では許容されている)から投球フォームを変更すると共に、その投球スタイルも変化させ2シーズンを経過した2008年のシーズンは21勝をあげて最多勝を始めとした投手主要タイトルを総なめにする活躍を見せた。

2006年のドラフトで同じ楽天に入団した田中将大は、この岩隈の様子を間近で見ていた訳だ。

2012年にメジャー移籍後の岩隈は、その投球術を進化させてシアトルマリナーズの主戦投手として安定した投球を見せて行く。

ベース板の幅を最大限に使い、高めのボールを見せつつ、最後は低めの変化球でゴロを多く打たせる投球術は、いくら観ていても飽きない程芸術的だ。まさにメジャー移籍後の田中将大の投球スタイルと良く似ている。そして、この二人の「メジャーでの」通算勝率の高さ(岩隈=.608 田中=.629)こそ、この投球スタイルの完成度の高さを証明している様に思う。

11月7日東京ドームで岩隈の引退セレモニーを開催

先述の通り、藤川や五十嵐の様に一軍のマウンドでの引退登板は不可能になった岩隈。しかし、ジャイアンツは、その岩隈の為に引退セレモニーを東京ドームで行われる11月7日の対ヤクルト戦で行うとの事だ。

移籍後ただの1試合も登板していない投手の引退セレモニーを行う事自体、かなり異例の事である。これもWBCを共に闘った原監督肝入りの粋な計らいなのだろう。こんなところにも、原監督の名将としての器が見て取れる。

ジャイアンツのユニフォームを着て引退する日米通算170勝をあげた名右腕の最後の雄姿を目に焼き付けつつ、次代の投手育成を期待したい。

投稿者: スタジオスモーキー カルロス

2013年12月から開始したポッドキャスト番組「スタジオスモーキー」のブログです。 音声では伝えきれないコンテンツを公開して行きます。

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